千葉県北東部、利根川のほとりに広がる香取市は、「北総の小江戸」と呼ばれる佐原の町並みで知られる地域です。小野川沿いに商家がずらりと軒を連ね、関東で初めて重要伝統的建造物群保存地区に指定されたこの町並みは、今も多くの店が家業を営み続ける「生きている町並み」。ユネスコ無形文化遺産に登録された「佐原の山車行事」や、日本地図を作った伊能忠敬の旧宅も残り、江戸の粋と誇りが今なお市民の暮らしに息づいています。
町を少し離れれば、利根川が育んだ豊かな水郷景観が広がります。初夏には、あやめパークで150万本ともいわれる花菖蒲が一面に咲き誇り、その中心には日本屈指の格式を誇る古社、香取神宮が鎮座。荘厳な森と四季折々の自然が調和し、古くから人々の信仰と憩いの場として大切にされてきました。


食の面でも香取市は魅力にあふれています。県内有数の米どころであり、サツマイモや日本酒など、豊かな恵みに支えられた食文化が根付いています。近年では、歴史的な建物を宿泊施設として再生した「NIPPONIA SAWARA」のように、伝統を守りながら現代のニーズにも応える先進的な取り組みが進んでおり、古い町並みを大切にしながら新しい活力を生み出す姿勢が注目を集めています。

そんな香取市では現在、農園リゾート「THE FARM」を受け入れ先として、ふるさとワーキングホリデーの参加者を迎えています。用意されているのは2つの職種。ひとつは、温浴施設「おふろcafé かりんの湯」での施設運営補助で、食堂補助やリネン業務、施設内の清掃、浴室点検、開店準備などを担当します。もうひとつは、グランピングエリアでの運営補助。テント内の清掃やベッドメイキング、備品準備を中心に、状況に応じてお客様のご案内をお願いすることもあります。どちらも未経験から始められる仕事です。
観光で訪れるだけでは、その土地の「裏側」まではなかなか見えてきません。農園リゾートの現場に立つと、お客様を迎えるためにどれだけの準備が積み重ねられているのか、心地よい時間がどのように用意されているのかを、身をもって知ることができます。
また、香取市には地域おこし協力隊をはじめ、外から移り住んで地域と関わっている人が数多くいます。仕事を終えたあとや休日には、そうした人たちと一緒に地域の行事に参加したり、まちを歩いたりする時間も大切にされています。1ヶ月という滞在期間を通して、香取市を「訪れる場所」ではなく「暮らす場所」として体感してもらうことが、受け入れ側の願いです。

滞在中は、地域おこし協力隊と連携した交流の機会も設けられています。これまでに、協力隊が主催する地域のサッカーイベントへの参加や、協力隊が案内役を務める佐原のまち歩きと昼食会も実施されました。仕事の場だけでは出会えない地域の方々と接点を持つことで、参加者が「働きに来た人」ではなく「地域で過ごす人」として関われるよう、さまざまな働きかけが行われています。
香取市は、千葉県内で初めてふるさとワーキングホリデーに取り組む自治体。受け入れ事業者にとっても地域にとっても初めての経験のなかで、地域おこし協力隊が自身の企画するイベントに参加者を迎え入れるなど、受け入れる側としての関わり方を主体的に模索してきました。プログラムを修了した参加者からは、滞在中のサポート体制や地域の方々との交流について、前向きな声が寄せられています。受け入れを検討中の事業者からも、若年層を迎えて香取のファンをつくる取り組みとして関心が寄せられているそうです。
令和8年度は、年間を通じて10名の受け入れを目標としています。現在の「THE FARM」に加え、秋以降の受け入れに向けて新たな事業者との調整も進められており、通年で切れ目のない募集ができる体制づくりが目指されています。千葉県内では前例のない取り組みであり、参考にできる先行事例が近隣にない中でのスタートでしたが、香取市での実践を、県内の他地域にとっての一つのモデルとしていきたいという思いが込められています。
水と歴史が織りなす町並みを歩き、農園リゾートで働きながら地域の人たちと出会う。そんな1ヶ月を過ごしてみたい人は、香取市のふるさとワーキングホリデーに参加してみてはいかがでしょうか。