南北に長い長野県の、南に位置する豊丘村。
天竜川を挟んで西側に中央アルプス(木曽山脈)、東側に南アルプス(赤石山脈)とその前山の伊那山脈を望み、東に向かって階段状に高くなっていく河岸段丘という地形が特徴的です。
階段の平らな面にあたる「段丘面」は田と果樹園のみずみずしい緑に、壁のように立ち上がった「段丘崖」が深い森に彩られ、段丘面と段丘崖が交互に続く壮大な眺めはこの地域ならではの景観です。
河岸段丘の下段地区の一角、伴野地区には、昭和50年代に造成した伴野工業団地があり、技術力の高い製造業などが展開されています。リニア中央新幹線が開業すれば、利便性のよい工業地区はさらに発展していくことが期待されます。
工業によっても経済を支えつつ、村ではもともとの基幹産業である農業の振興に力を入れて、2つの柱の両立を目指しています。
長野県は農家数が全国1位の農業県ですが(農林水産省「2020年農林業センサス」)、ここ豊丘村でも、河岸段丘の高低差などを活かして、豊富な種類の農作物を生産しています。りんご、桃、梨、ぶどう、柿などの果実や、アスパラ、きゅうり、ねぎ、ズッキーニ、トマトなどの野菜、そして米。
もうひとつ特筆したいのは、香りの王様、松茸です。村の山林の多くを占める赤松林は、香りも食感も上質な松茸の宝庫。地域住民が運営する「堀越まつたけ観光」は、地元の松茸のみを使った松茸づくしの料理で、40年以上にわたって人々の味覚を楽しませています。
農業の担い手は、同時に、豊丘村の景観の守り手でもあるため、村ではさまざまな助成や支援を行っています。「豊丘村新規就農者支援事業」「担い手支援事業耕作支援金」「げんき農業支援事業」など就農スタイルに合わせた助成のほか、移住を希望する人のための「住宅購入支援、空き家借入れ支援」もあります。
また、みなみ信州農協と南信州14市町村が実施する「南信州・担い手就農プロデュース」では、2年間の農業研修を受けることができます。たとえば、渋柿を干して「市田柿」をつくる研修などもユニーク。市田柿は、粉を吹いた表面と、しっとりした食感が特徴の村の特産品です。
研修期間中は豊丘村に地域おこし協力隊として雇用され、村が貸与する住宅に住み、報酬を得ながら農業を学べるというメリットがあります。
子育て支援も充実しています。経済的な助成があるほか、保育園のころから中学校まで一貫して、レタス狩りやさくらんぼ狩りなどの楽しい農家体験を行っているのも豊丘村らしいところ。
子育て世代にも、農業に興味のある人にも、大いに魅力ある土地ではないでしょうか? 豊丘村は県北部と比べるとかなり温暖な気候で、降雪量も少なく、暮らしやすいことも魅力のひとつです。
農業移住への最初のステップとしては、2泊3日で農業体験ができる「ワーキングホリデー」がおすすめです。食事・宿泊費は村が負担するため、参加者は自宅から豊丘村までの往復交通費のみの負担で、ベテラン農家の指導を受けられます。
自然にふれ、農家の人の知恵や地元の人の温かさにふれて、観光だけではわからない村の良さを体験できるでしょう。
募集は毎年春と秋に行っています。本格的な移住も視野に入れて、一度、体験してみる価値がありそうです!