ワカモノメンバー取材記事

受け継がれる伝統文化が溢れる町で、日本らしさを再発見

玉井 日向子
徳島県徳島市:玉井 日向子

 吉野川河口の三角州に発達した徳島県徳島市は、水と緑が豊かなコンパクトシティ。市内に流れる134もの川と、シンボルである眉山が風光明媚な景観を創り出しています。年間を通して気候が温暖で日照時間も長い徳島市は、県外からのアクセスも良好です。東京から飛行機で約1時間10分、大阪からはバスで約2時間30分で移動が可能。

 世界的に有名な伝統芸能『阿波おどり』だけでなく、人形浄瑠璃や藍染・阿波しじら織、木工製品など、個性豊かな文化が揃う徳島市には、魅力的なプログラムが用意されています。今もなお受け継がれる数々の伝統文化に触れることで、日本の奥深さを再発見すること間違いなし。

藍染体験で知る”てしごと”の大変さ

 創業明治30年の長尾織布合名会社(ながおおりふごうめいがいしゃ、以下「長尾織布」)では、代々継承される技術を用いて「阿波しじら織」と「阿波藍」の生産を行っています。ふるさとワーキングホリデーの受け入れも行っている長尾織布さんでは、ワーキングとして藍染の体験ができます。

 藍の染料は、藍の葉を発酵・酸化させて得られます。藍の葉から抽出される色素が酸素と反応して藍色に変化するのです。気温の変化に敏感な藍は、日によって違う色合いで染まることが特徴であり、独特の深みと風合いが魅力といえるでしょう。

今回のワーキングでは、主にハンカチの染色に携わらせていただきました。

輪ゴムを用いて、一枚一枚丁寧に折り目をつける「絞り染め」。同じやり方でも折り目の幅や絞り位置が違うだけで、模様にも変化が表れる。藍染が永く愛され続けている理由は、ひとつとして同じものはない味わい深さだと実感しました。

 ジャパン・ブルーと称される深みのある藍色を完成させるには、何度も染料に浸け、酸素に触れさせる工程が必要です。伝統産業は、繰り返し作業に対する正確性と忍耐力が試されるものだと感じました。

絞った後のハンカチの染色
染色後のハンカチ:藍のアクを流水で洗い流している様子

徳島市で糧となる経験を

 徳島市のふるさとワーキングホリデーは、保育施設と伝統産業事業所(藍染・木工)合わせて計14施設で受け入れを行っています。きっかけは、徳島市の関係人口の創出と移住の促進、そして各事業の担い手の確保でした。

 

 今回は徳島市ふるさとワーキングホリデー担当者の江淵和晃(えぶち かずあき)さんにインタビューをさせていただきました。

 インタビューの中で江淵さんは、このふるさとワーキングホリデーを通して、徳島市を訪れたすべての人たちがすぐに移住することは難しいことを理解した上で、一人でも多くの「徳島ファン」を増やしたいと話してくれました。

『人生のターニングポイントで自分の身を置く場所のひとつとして徳島市を思い出して欲しい』

江淵さんは、ふるさとワーキングホリデーの参加者に徳島市で得た新たな見聞をそれぞれの道で活かしてほしいと語ってくれました。あまり馴染みのない伝統産業を実際に現場で見ることで、新たな刺激になってほしいという想いが込められていました。

長尾織布合名会社の近くに流れる鮎喰川

 徳島市は、身近に目を奪われるような景色が広がっている情緒豊かな町です。心揺さぶる伝統文化だけでなく、すだちや阿波和三盆糖など徳島県の特産物も数多く楽しめます。

地域の人と深い繋がりを求める人、新しい世界を発見したい人、そして日本の伝統文化を存分に味わいたい人には、一度足を運んでみてほしいです。

きっとあなたも徳島ファンになってしまうはず。