地域の魅力紹介

福島県南会津郡只見町

 

ユネスコエコパークにも登録された、豊かな自然と人々が共存する場所で

 

福島県の西南に位置する只見町は、日本の原風景に出会えるような場所です。四方を山に囲まれた土地に、只見川やその支流の伊南川が流れ、川の流域に集落が点在しています。
2014年には、自然と人々が共存するモデル地域として、只見町全域と檜枝岐村の一部が「只見ユネスコエコパーク」に登録されました。広大なブナ林があり、多様性に富んだ植生が見られ、希少な動物も生息しています。また、豊富な雪解け水を発電に利用するためにつくられた田子倉湖や只見湖は、クリーンな電力の源であり、動植物の生息・生育地にもなって、さらに豊かな自然を育んでいます。
冬の積雪深が2〜3mにもなる豪雪地帯で、自然の厳しさを感じることも多いでしょうが、町の人たちは、この豊かな自然とともにある暮らしに誇りを持ち、「自然首都」を名乗っています。

もう一つ、只見町を語るときに欠かせないのが「只見線」です。会津若松駅から新潟県の小出駅までを結ぶこの鉄道は、沿線地域の人々にとって重要な交通手段であると同時に、その車窓風景の美しさが人々を引きつけてやまない人気のローカル線です。
2011年7月の新潟・福島豪雨により、鉄橋が流されるなどの甚大な被害を被りましたが、地元の人々の強い願いによって復旧工事が進められ、2022年10月、ついに全線が再開したのは記憶に新しいところです。
現在は、線路沿いの草を羊に食べてもらって除草するなど、景観美化を図りながら、乗客を温かく迎えています。

只見町の特産品として真っ先にあげられるのは「南郷トマト」です。冷涼で、昼夜の寒暖差が大きい気候を活かし、甘く身の引き締まった高品質のトマトが栽培されています。始まりは、1962年に旧南郷村で有志が立ち上げたトマト研究会でしたが、品質の向上・安定はもちろん、雪を利用して出荷前のトマトを冷やす「雪室予冷庫」の整備など、さまざまな取り組みを続けた結果、40年以上にわたって年間4000トン以上の生産量を誇る産業となりました。新規就農者の迎え入れも積極的に行っています。

新しい特産品として注目を集めているものに、米焼酎「ねっか」があります。先祖から伝わる土地での米づくりから始め、森から湧き出る水を使用した、100%地元原料の米焼酎です。日本酒の醸造技術はほぼ全国にありますが、蒸留技術を必要とする焼酎の生産は、九州以外ではとても珍しいものです。
米焼酎は、近年、世界でもその美味しさが認められつつあり、「ねっか」は、2021年にフランスで開催された日本酒コンクール「Kura Master」で金賞を受賞するなど、その実力を評価されています。
ここ只見町の“日本一小さな蒸留所”から、世界にただ一つの味を発信するとともに、地域の田んぼを次世代に引き継いでいくことが、「ねっか」づくりの大きな目的です。

只見町の北東にある、布沢・坂田集落で有志によって運営されている「森林(もり)の分校ふざわ」もユニークな取り組みです。廃校になった小学校を宿泊体験施設としてよみがえらせ、ここを基点としてさまざまな“只見での過ごし方”を提供しています。
トレッキングや沢歩き、釣り、農業体験、冬季のかんじき体験やかまくらつくり体験、縄をよってコースターやブレスレットをつくったり、ブナの葉染め、つる細工……などなど、自然とふれあいながら、地元の人の知恵を学べる体験が数多くあり、只見町を知るにはまさにうってつけでしょう。

只見町には、さまざまな地域から移住してきた人がいます。この自然に惹かれて何度も訪れている内に、移住を決めたという人も少なくありません。
農業の経験が全くなく、南郷トマト農家に就農した人もいます。前述の米焼酎「ねっか」や、「森林の分校ふざわ」も、南郷トマト農家とともに、移住する場合の受け入れ職種の筆頭としてあげられます。
また、最近では「只見働き隊事業協同組合」という、季節ごとに複数の職場で正規職員として働くことができる組合が設立され、とくに移住者の方に人気が高まっています。移住の入口として複数の職場で人間関係を構築できることは、地域に素早く馴染むことにつながります。そして、異なった職種から自分の適性に合った仕事を見つけられることも大きな魅力です。

自然の中で暮らしたいと考えている人は、一度、只見町を訪れてみてください。“オーダーメイドの移住体験”も実施しているので、ゆっくり滞在しながら地元の人と話したり、興味のあることをたくさん体験してみてはいかがでしょうか。